老後のリスクを考えると、借家より持ち家に住むべき具体的な理由

2021/02/13
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”借家か持ち家か、という論争を損得の観点から語る人は多いが、老後資金を考える際に最重要である「リスク回避の観点」から考えれば、持ち家を選択すべきである。(経済評論家 塚崎公義)

● 借家と持ち家の論争は、損得の観点が多い

 借家と持ち家はどちらが得か、という論争は、絶え間なく行われている。論争が続いていることから考えると、どちらかが圧倒的に得だ、ということではなさそうだ。

 そうであれば、リスクを回避するという観点から持ち家を選択すべきだと筆者は考える。老後資金を考える際に最重要なのは「ヒドい目に遭わない」ということであり、そのためにリスクを回避することだからである。

 それはつまり、儲かって豊かに暮らす可能性を放棄しても、損してみじめな老後を過ごすリスクが回避できるなら、そうすべきだ、ということだ。この点については拙稿を参照していただければ幸いである。

● 借家はリスクが大

 老後資金を考える際の最大のリスクは、長生きをしている間にインフレが来て現役時代に蓄えた老後資金が底を突いてしまうことだ。

 それを考えると、老後の借家住まいはリスクが大きすぎる。長生きしていれば、その間ずっと家賃を支払い続ける必要がある。その間にインフレが来れば、毎月払う家賃が値上がりし、それを長期間払い続けることになる。

 家賃以外の生活費も値上がりし、長期にわたって老後の蓄えを減らし続けているときに、家賃がそれに上乗せされることの打撃は極めて大きいものといえよう。

 加えて、何らかの事情で住み替えが必要となった場合、一人暮らしの高齢者には家を貸したがらない大家も多いようなので、借家探しに苦労する、というリスクも併せて考えておきたい。

● 持ち家のリスクは限定的

 持ち家であれば、長生きしている間にインフレが来ても、家賃を支払う必要がないので、生活費の高騰だけで済む。

 人口減少社会なので、不動産の価格は下がっていくかもしれない。しかし、自宅の価格が下がっても、住んでいる間は使用価値を満喫できるので、別に困らないであろう。

 大地震と大津波で大都市が壊滅状態になったとする。読者の自宅も流されてしまい、大きな経済的な損失を被るかもしれない。しかし、その場合でも地面は残るから、戦後の住宅のようなもので雨風をしのぐことはできるだろう。

 一方で、借家が流されてしまっても、経済的な損失は小さいであろうが、土地を所有していないと、当面住む場所さえ確保できない可能性がある。これは、老後資金というレベルを超えたリスクであろう。

● 自宅取得時の「強制貯蓄」にもメリット

 現役時代についても、自宅に住むことが望ましいだろう。そうでなければ、退職時までに「老後の生活資金に加えて自宅購入資金または老後の借家の家賃」を用意しなければならないからである。

 住宅ローンで自宅を購入すると、毎月銀行に多額の返済をしなければならない。この分は、銀行が預金口座から自動引き落としをするので、自宅を放棄して夜逃げをしない限り、払わないという選択肢は事実上ないだろう。

 これは、厳しいようだが、意志の弱い人間にとっては、「強制的に貯蓄をさせられている」状態なので、むしろ望ましいといえるかもしれない。

 現役時代に借家に住んでいれば、住宅ローンを払わなくて良いが、一方で「退職時の自宅購入」または「老後の家賃支払い」のために貯金しておく必要がある。したがって、自宅に住んで住宅ローンを返済している場合と同じくらいの金額を老後の住宅のために貯金しておく、といったイメージとなろう。

 これは、意志の弱い人間にとっては大変難しいことだ。ダイエットや禁煙に失敗した経験のある人、夏休みの宿題を最終日に泣きながらやった経験のある人たちには、この意味からも持ち家をお勧めしたい。

● 貸家はリスク

 「借家より持ち家」と記すと、筆者が不動産所有を勧めているように感じる読者もいるだろうが、そうではない。「持ち家に加えて貸家も持つ」のは、やはりリスクだ。

 将来の家賃が2倍になるか半分になるか、予想することは難しい。インフレが来れば2倍になるかもしれないし、インフレが来なければ人口減少社会で空き家が増えて家賃は下がっていくかもしれない。

 借家の場合、家賃が下がるとうれしいが、家賃が上がると大変困る。この状態は「老後資金はリスクを避ける」という観点からは好ましくない。

 反対に、貸家を所有している場合、家賃が上がればうれしいが、下がれば困る。貸家建設資金が返済できないリスクが出てくるからである。この状態も、「老後資金はリスクを避ける」という観点からは好ましくない。

 これに対し、持ち家に住んで貸家を持っていない場合には、家賃が上がっても下がってもうれしくもないし困りもしない。これが最もリスクを避けた選択肢だ、ということになろう。”

引用元:Yahooニュース(2021.1.15)/老後のリスクを考えると、借家より持ち家に住むべき具体的な理由/URL

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